先に書かれている、駆け出し監査人さんの書評でほぼ言い尽くされていますが。
イスラム支配からレコンキスタに至る歴史はあまり知らなかったので、とても興味深く読んでいます(まだ半分くらい)。
しかし読みづらい。おそらく原文がそうであるのでしょうが、過度に華美に装飾をほどこしたような長文がやたらと続いて、結局要点は何なのかがその中に埋もれてしまうので、読み解くのに苦労します。
訳者はおそらく原文の装飾性を活かしたいと苦労されたのでしょうが、そのために日本語的ではない文章ばかりになっています。これもおそらくは分詞構文や関係代名詞で延々とつらなる原文を同じような調子で訳していると思われる長文が続きます。だからどの語がどこにつながっているかを注意して読まないと、読者は装飾的な語群の中で迷宮入りしてしまうでしょう。中にはあきらかに前半と後半でつながらない文もあったりします(私見ですが)が、それは原文がそうなのかもしれません。英語などがわかる人なら理解できるだろうという日本語ですが、そうでないと取り付きにくいと思います(英語翻訳をやってたことがあるので、そうなんじゃないかと思いました)。
塩野七生が書いたらば、はるかに簡潔に面白く書いただろうと思います。塩野七生の本(十字軍物語とか海の都の物語とか、色々あります)など、ヨーロッパの歴史関連を読んでいると内容も理解しやすいですが、いきなりこの本から始めるのはお勧めしません。
ちなみにイスラム教の寛容、キリスト教の非寛容は塩野七生の「十字軍物語」でも十分に語られています。これを読むと、十字軍とはキリスト教原理主義過激派テロリスト、今のテロリストよりはるかに過激なテロ集団だったということがよくわかります。
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寛容の文化―ムスリム、ユダヤ人、キリスト教徒の中世スペイン― 単行本 – 2005/8/10
マリア・ロサ・メノカル
(著),
足立 孝
(翻訳)
「世界の宝飾」と呼ばれた輝ける土地の記憶――。700年以上にわたる三宗教の共存のただなかで形成された「寛容の文化」を、美しいタペストリーを織り上げるかのごとく再構成し、地中海・ヨーロッパ世界の歴史と文化の新たな相貌を浮かび上がらせる。それが今日の世界に示唆するものは、われわれの心をゆさぶらずにはおかないであろう。
【書評】
・『パセオフラメンコ』(2007年3月号、第273号、評者:佐藤奈津子氏)
“…… 読み終わる頃には、中世ヨーロッパに対して異なるイメージを持つことになる。忽然と湧いた文化は、スペインの艶やかな独自性を形成するだけでなく、後のヨーロッパの知的根源ともなった。大音楽家ズィルヤーブがバクダッドを後にし、コルドバを終の棲家としたのもその頃である。さまざまな影響を受けつつフラメンコ音楽の下地が形を見せ始める時期であることも読み取れよう。アンダルシアの歴史の底知れぬ魅力に興奮することは間違いない。”(『パセオフラメンコ』2007年3月号、p.93)
・『歴史と地理』(2006年5月号、第594号、評者:塚原直人氏)
“…… 本書を読むと、レコンキスタを、ステレオタイプなイスラームとキリスト教徒の対立抗争とみることの愚かしさを感じさせられる。トレードを「奪還」したカスティーリャ人が建てたサン・ロマン教会はアラビア語の碑文で装飾され、彼らのイスラーム文化への敬意を具現している。一方、彼らキリスト教徒は、アラビア語で聖体拝領を行う独自な伝統を保持していたが、西欧世界との接触のなかで勢力を浸透させてきたクリュニーの典礼改革と緊張関係を続けることになる。そのクリュニー修道院長ピエールは、12世紀半ば、アラビア語文献の翻訳者を求めてアンダルスを訪れている。彼はムスリムとユダヤ人を「啓典の民」と認識し、十字軍に反対していたのであった。そして1492年1月2日、アルハンブラの占領に向かったカトリック両王が纏っていたのは、最上級のモーロ風の衣服であった。やがてムスリムとユダヤ人を追放することになる二人もまた、「寛容の文化」の末裔なのであった。 2001年9月11日後の、不寛容と不寛容がぶつかり合う世界をみるとき、本書の持つきわめて今日的なメッセージをどう受けとめていくのか考える必要があろう。”(『歴史と地理』2006年5月号、p.63)
・『史学雑誌』(2006年4月号、第115編第4号、評者:黒田祐我氏)
“…… 著者の専門である文学や詩歌をめぐる主張は、説得力と気迫に満ち満ちており、読者の心を揺さぶらずにはおかない。中世スペイン史研究者以外にはあまり知られていない刺激的な逸話を盛り込みつつ、西洋史とイスラーム史の橋渡しとしての役割をも巧みに果たしている。そして本書の最大の特色は全編を通じての表現の卓越さにある。その意味で原文の躍動感を全く損なわず、いやむしろより流麗ですらある文章に昇華させた訳者の力量に驚嘆するほかない。読書を楽しみつつも、ある人は有益な教訓を、ある人は賛否いずれにせよ議論の題材もしくは出発点を本書に見出すことであろう。”(『史学雑誌』2006年4月号、pp.123-124)
・『出版ニュース』(2005年11月上旬号)
“…… アメリカで出版されると宗教対立が渦巻く国際情勢を解決し、異文化共存のあり方を探る書として大きな話題を集めたという。”(『出版ニュース』2005年11月上旬号、p.22)
・読売新聞(2005年11月6日付、評者:池内恵氏)
“…… アンダルスは失われてなお(失われたからこそ?)欧米の人文主義的知識人の間で憧憬と哀惜の念を込めて振り返られてきた。本書にはアンダルス追想のエッセンスが凝縮されている。近年に欧米の知識人サークルでイスラーム世界との知的交流を図る際には「新しいアンダルスの創設」が合言葉のようになっている。アラブ諸国でも近代派・親西欧派知識人の間には、アンダルスの知的系譜にこそイスラーム文明の中から近代化を達成する萌芽があったはずだ、と思想史を読み替えていく動きがある。著者は知的好奇心と文学的興趣に応えるだけでなく、異なる価値規範を奉じた人間集団の間に共存の道を見出すという現代の国際政治の最重要課題にも提言を図っている。”(「読売新聞」2005年11月6日付、第12面から)
・毎日新聞(2005年10月9日付、評者:富山太佳夫氏)
“…… 当然と言うべきなのか、それとも歴史の教訓とはこういうものと納得すべきなのか、中世のアンダルスの歴史のうちに、アメリカ帝国が世界にのさばるわれわれの時代の直面する難問を解決しようともがいたひとつの例がすけて見てるような気さえしてくる。 「ムスリムは、現代の世俗的なヨーロッパ諸国家に統合されうるだろうか。原理主義的なキリスト教徒は、彼らの子供たちを信仰の教育と同じく理性の教育に、聖書上の真実と同じく進化論的な諸理論に触れさせるべきだろうか。カトリックのクロアチア人、正教のセルビア人、ムスリムのボスニア人はバルカン半島で共存できるだろうか。寛容と不寛容はどうしたら並び立つことができるだろうか」。アメリカの研究者マリア・ロサ・メノカルはそうした問題意識を抱えながら、さらには9・11以降の情勢をにらみながら、この本を書いている。 だからこそ、この本は生き生きとしているのだ。歴史の細部がそれ本来のかがやきを取り戻すのだ。アラビア語の書物の焚書を命じ、「最も圧政的な異端審問の時代」を演出したカルロス一世をめぐるエピソードにしても、その一例としてよいだろう。…… それだけではない。著者はアンダルスに形成された寛容の文化をふまえて、ボッカチオの『デカメロン』を、セルバンテスを、さらには現代の小説家ルシュディまでも読み直してみせる。『ドン・キホーテ』の背後にある歴史のある部分がこんなにも鮮やかに浮上してくるとは、まったくの予想外であった。”(「毎日新聞」2005年10月9日付、第9面から)
【書評】
・『パセオフラメンコ』(2007年3月号、第273号、評者:佐藤奈津子氏)
“…… 読み終わる頃には、中世ヨーロッパに対して異なるイメージを持つことになる。忽然と湧いた文化は、スペインの艶やかな独自性を形成するだけでなく、後のヨーロッパの知的根源ともなった。大音楽家ズィルヤーブがバクダッドを後にし、コルドバを終の棲家としたのもその頃である。さまざまな影響を受けつつフラメンコ音楽の下地が形を見せ始める時期であることも読み取れよう。アンダルシアの歴史の底知れぬ魅力に興奮することは間違いない。”(『パセオフラメンコ』2007年3月号、p.93)
・『歴史と地理』(2006年5月号、第594号、評者:塚原直人氏)
“…… 本書を読むと、レコンキスタを、ステレオタイプなイスラームとキリスト教徒の対立抗争とみることの愚かしさを感じさせられる。トレードを「奪還」したカスティーリャ人が建てたサン・ロマン教会はアラビア語の碑文で装飾され、彼らのイスラーム文化への敬意を具現している。一方、彼らキリスト教徒は、アラビア語で聖体拝領を行う独自な伝統を保持していたが、西欧世界との接触のなかで勢力を浸透させてきたクリュニーの典礼改革と緊張関係を続けることになる。そのクリュニー修道院長ピエールは、12世紀半ば、アラビア語文献の翻訳者を求めてアンダルスを訪れている。彼はムスリムとユダヤ人を「啓典の民」と認識し、十字軍に反対していたのであった。そして1492年1月2日、アルハンブラの占領に向かったカトリック両王が纏っていたのは、最上級のモーロ風の衣服であった。やがてムスリムとユダヤ人を追放することになる二人もまた、「寛容の文化」の末裔なのであった。 2001年9月11日後の、不寛容と不寛容がぶつかり合う世界をみるとき、本書の持つきわめて今日的なメッセージをどう受けとめていくのか考える必要があろう。”(『歴史と地理』2006年5月号、p.63)
・『史学雑誌』(2006年4月号、第115編第4号、評者:黒田祐我氏)
“…… 著者の専門である文学や詩歌をめぐる主張は、説得力と気迫に満ち満ちており、読者の心を揺さぶらずにはおかない。中世スペイン史研究者以外にはあまり知られていない刺激的な逸話を盛り込みつつ、西洋史とイスラーム史の橋渡しとしての役割をも巧みに果たしている。そして本書の最大の特色は全編を通じての表現の卓越さにある。その意味で原文の躍動感を全く損なわず、いやむしろより流麗ですらある文章に昇華させた訳者の力量に驚嘆するほかない。読書を楽しみつつも、ある人は有益な教訓を、ある人は賛否いずれにせよ議論の題材もしくは出発点を本書に見出すことであろう。”(『史学雑誌』2006年4月号、pp.123-124)
・『出版ニュース』(2005年11月上旬号)
“…… アメリカで出版されると宗教対立が渦巻く国際情勢を解決し、異文化共存のあり方を探る書として大きな話題を集めたという。”(『出版ニュース』2005年11月上旬号、p.22)
・読売新聞(2005年11月6日付、評者:池内恵氏)
“…… アンダルスは失われてなお(失われたからこそ?)欧米の人文主義的知識人の間で憧憬と哀惜の念を込めて振り返られてきた。本書にはアンダルス追想のエッセンスが凝縮されている。近年に欧米の知識人サークルでイスラーム世界との知的交流を図る際には「新しいアンダルスの創設」が合言葉のようになっている。アラブ諸国でも近代派・親西欧派知識人の間には、アンダルスの知的系譜にこそイスラーム文明の中から近代化を達成する萌芽があったはずだ、と思想史を読み替えていく動きがある。著者は知的好奇心と文学的興趣に応えるだけでなく、異なる価値規範を奉じた人間集団の間に共存の道を見出すという現代の国際政治の最重要課題にも提言を図っている。”(「読売新聞」2005年11月6日付、第12面から)
・毎日新聞(2005年10月9日付、評者:富山太佳夫氏)
“…… 当然と言うべきなのか、それとも歴史の教訓とはこういうものと納得すべきなのか、中世のアンダルスの歴史のうちに、アメリカ帝国が世界にのさばるわれわれの時代の直面する難問を解決しようともがいたひとつの例がすけて見てるような気さえしてくる。 「ムスリムは、現代の世俗的なヨーロッパ諸国家に統合されうるだろうか。原理主義的なキリスト教徒は、彼らの子供たちを信仰の教育と同じく理性の教育に、聖書上の真実と同じく進化論的な諸理論に触れさせるべきだろうか。カトリックのクロアチア人、正教のセルビア人、ムスリムのボスニア人はバルカン半島で共存できるだろうか。寛容と不寛容はどうしたら並び立つことができるだろうか」。アメリカの研究者マリア・ロサ・メノカルはそうした問題意識を抱えながら、さらには9・11以降の情勢をにらみながら、この本を書いている。 だからこそ、この本は生き生きとしているのだ。歴史の細部がそれ本来のかがやきを取り戻すのだ。アラビア語の書物の焚書を命じ、「最も圧政的な異端審問の時代」を演出したカルロス一世をめぐるエピソードにしても、その一例としてよいだろう。…… それだけではない。著者はアンダルスに形成された寛容の文化をふまえて、ボッカチオの『デカメロン』を、セルバンテスを、さらには現代の小説家ルシュディまでも読み直してみせる。『ドン・キホーテ』の背後にある歴史のある部分がこんなにも鮮やかに浮上してくるとは、まったくの予想外であった。”(「毎日新聞」2005年10月9日付、第9面から)
- 本の長さ336ページ
- 言語日本語
- 出版社名古屋大学出版会
- 発売日2005/8/10
- ISBN-104815805180
- ISBN-13978-4815805180
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登録情報
- 出版社 : 名古屋大学出版会 (2005/8/10)
- 発売日 : 2005/8/10
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 336ページ
- ISBN-10 : 4815805180
- ISBN-13 : 978-4815805180
- Amazon 売れ筋ランキング: - 788,921位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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